小説「サークル○サークル」01-203. 「加速」
- 2012年12月13日
- 小説「サークル○サークル」
- サークル○サークル
2人はしばし無言のまま、昼ご飯にありついていた。シンゴは菓子パンを半分たいらげたところで、ふと視線をユウキに向けた。ユウキは2個目のシーチキンマヨネーズのおにぎりのパッケージを外しているところだった。
「何か僕に用だったの?」
シンゴは待っててくれ、と言われたことを思い出し、訊いた。
「実は……彼女のことで進展があったていうか……」
「進展?」
「はい。彼女、妊娠してるみたいなんです」
「えっ? 妊娠? やけに話が飛ぶね」
「えっと……この間、たまたま、彼女が産婦人科から出て来るのを見たんです」
「なるほど……」
シンゴは菓子パンを見つめ、唸る。ユウキを励ましたい気持ちはあったが、産婦人科から出てきた以上、そういうことなのだろう、と思った。
こういう時、気の利いた言葉を言える人間とは程遠いんだな、とシンゴは自分自身の気の利かなさ具合にほとほと呆れていた。
「きっと、このまま、彼女は泥沼離婚裁判とかになって、大変な目に遭っちゃうんですよね……」
ユウキの言葉以上に声が悲しさを帯びていた。