小説「サークル○サークル」01-208. 「加速」

「でも、シンゴさんだって……」
「ああ、相手の気持ちは考慮していない。けれど、相手の気持ちを考慮していないのは、お互い様だよ。浮気をしたのは、妻の方だからね」
「……」
「彼女にとって、君は幼馴染である、ということを忘れちゃダメだ」
「はい……」
ユウキは力なく答えた。
「そうそう、尾行は数日のうちに実行することになると思う」
「えっ……?」
「来たいんだろう? 尾行」
「はい!」
シンゴは自分でもどうして彼女を見守れ、と言った後で尾行に誘っているのかがわからなかった。彼女を見守るならば、尾行の方法なんて教えなくていいはずだ。シンゴは自分の行動の矛盾に内心呆れた。
「妻が夜出掛けたら、尾行する。その時は連絡するよ」
「それじゃあ、これ……」
ユウキは1枚の紙切れをシンゴに渡した。シンゴが開くと、そこにはユウキのものであると思われるメールアドレスと電話番号が書いてあった。
「ここに連絡して下さい。飛んでいきます!」
ユウキは満面の笑みでシンゴに言った。


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