小説「サークル○サークル」01-247. 「加速」

「男の方が情にほだされちゃって、奥さん捨てて、子どもの出来た不倫相手と結婚しちゃうのよ」
アスカは溜め息混じりに答える。
「まぁ、わからなくもないかなぁ……」
シンゴの言葉にアスカはシンゴを睨みつけた。
「ほら、やっぱり」
「何怒ってるんだよ」
「男ってそういう生き物なのよね。弱く見える方に流されて行く」
「えっ?」
「そういう女は弱く見えるだけで、計算高くて強い女なのよ。浮気されていることがわかっても、直接旦那に言えない方がよっぽど弱い女よ。その区別もつかないんだから、ホント男ってバカ」
「……何か嫌な思い出でもあるの?」
「別にそういうわけじゃないけど」
アスカは否定したけれど、シンゴは怪しいと思った。けれど、今、これ以上訊けば、火に油を注ぐことになりかねない。シンゴはそれきり黙って、アスカが喋り出すのを待っていた。
「でも、あの子なら、そういうことはしないかなぁ……」
アスカはぽつりと呟いた。
「どうして、そう思うの?」
「いいコなのよね。基本的に。本来なら、不倫なんてしなさそうなタイプなのよ。人のモノを奪おうってタイプのコじゃないの」
「でも、不倫してるんだろう?」
「そうなのよ。だから、何か理由があるんじゃないかなぁって」
アスカは今日のレナとの会話を思い出していた。
何かが引っかかる。けれど、何が引っかかっているのか、アスカにはまだわからなかった。


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