小説「サークル○サークル」01-253. 「加速」

朝は規則正しくやってきて、シンゴの眠りを妨げた。窓の隙間から入ってくる朝陽にシンゴは目を細め、むくりと起き上がる。すでにアスカの姿はなかった。
リビングへ行くと、テーブルの上に朝食が用意されていた。こんなことは初めてで、シンゴは思わず二度見する。
キッチンパラソルの横にはメモが置いてあった。
“おはよう。仕事に行ってきます。朝ご飯作ったから食べてね。お味噌汁とご飯は自分で入れて下さい”
端正な字で書かれた文字をシンゴは二度読んだ。なんだか、メモに書かれていることが信じられなかったのだ。
そっとキッチンパラソルを開けると、そこには焼き鮭と小松菜のおひたしがあった。箸置きに置かれた箸の横には、味噌汁を入れる器と茶碗も伏せて置いてある。
シンゴはキッチンパラソルを元に戻すと、顔を洗いに洗面所へと向かった。
顔を冷たい水で洗い、鏡に映る自分を見て、溜め息をつく。冴えない顔だな、と思った。
そそくさと洗面所を後にすると、シンゴはキッチンパラソルの中から、味噌汁を入れる器と茶碗を取り出した。味噌汁の入った鍋を火にかけ、その間に茶碗にご飯をよそう。
味噌汁が温まったのを確認すると、シンゴは器に入れ、席へと着いた。


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