小説「サークル○サークル」01-252. 「加速」
- 2013年03月27日
- 小説「サークル○サークル」
- サークル○サークル
記憶は時に邪魔になる。忘れたいことですら、心の中のどこかに残っていて、ふいに過っては感情を逆撫でていく。
記憶は感情と直結しているのだということを意識するのはそういう時だ。
そして、それは小説を書いている時によく訪れる。
その度にシンゴは溜め息をついた。
イライラしたり、落ち込んだり、そういう自分に呆れてしまう。
記憶に対して一喜一憂するのはナンセンスだし、振り回される自分の弱さにもうんざりする。
シンゴはタイプする手を止めて、椅子にもたれた。椅子は軋み、少しだけ後ろにたわんだ。
少し離れたところから、パソコンの画面を見つめると、真っ白な画面に並んだ黒い文字が何かの模様に見えた。自分が書かなければ、画面は白いままだ。白い画面の上に自分が紡ぎ出す言葉が意味をなしていくのは、なんとも言えない喜びだった。
けれど、その喜びの為に自分は過去の出来事にもう一度傷ついたり、悩んだりしている。
その矛盾にシンゴは再び大きな溜め息をついた。
今日はあまり仕事が進まないらしい。
きっとアスカとターゲットのことが頭をもたげている所為だ。
シンゴはパソコンを閉めると、席を立った。