小説「サークル○サークル」01-249. 「加速」

シンゴは口を閉ざし、アスカから視線をそらす。イライラを落ち着かせようと、小さく深呼吸もした。そんなシンゴに気付かず、アスカは続ける。
「何にせよ、今回はここまででね。彼女とターゲットを別れさせるにはもう少し時間が必要だわ」
「でも、期限を考えたら、そんな悠長なことも言っていられないんじゃないの?」
「そうなのよね……。だけど……」
そう言って、アスカは黙り、何か考えているようだった。
「そう言えばさ」
シンゴは言うか言うまいか悩んだ挙句、口を開いた。
「ターゲットとはその後どうなの?」
シンゴは口にしてからしまった、と思った。
これじゃあ、まるで、アスカとターゲットの関係を知っているみたいではないか。シンゴはアスカが自分の言葉の意味を素直に受け取ってくれるようにと願った。
「その後どうって、最近は接触してないからわからないわね」
アスカは考え込むような素振りを見せながら言った。
どうやら、シンゴの心配は杞憂に終わったようだ。
「そっか。それじゃあ、俺はそろそろ仕事に戻るよ」
「そう。頑張ってね」
アスカはシンゴに笑顔を向けた。


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