小説「サークル○サークル」01-262. 「加速」

「ところで、今日は何か俺に用があったんですか?」
ユウキは二つ目のおにぎりのセロハンを外しながら言った。
「ああ、そのことなんだけど……」
シンゴはそこまで言って口籠る。本当に自分が言おうとしていることが正しいのか、一瞬躊躇した。
「どうかしました?」
「いや……。実はさ、尾行しようと思ってて」
「奥さんを?」
「ああ、そうなんだ。それで、君も一緒にどうかなって思って。言ってただろう? 尾行する時は連れて行ってほしいって」
「はい」
「まだ君の好きな女の子は不倫しているの?」
「多分……。最近、会ってないから、確かなことはわかりませんけど……」
ユウキは小さな溜め息をついて答える。
「どうする? 一緒に尾行に行ってみる?」
「いいんですか!?」
「ああ、君が実際に彼女を尾行しないで済むような結果になることを願ってるけど」
「俺もそうなればいいとは思ってるんですけど……」
ユウキは浮かない顔で相槌を打つ。そんなユウキを見ながら、シンゴは思わず自分を重ねて見てしまった。


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