小説「サークル○サークル」01-305. 「加速」
- 2013年07月11日
- 小説「サークル○サークル」
- サークル○サークル
シンゴはずっとアスカがヒサシと浮気をしていると思っていた。だから、何度も尾行をしたし、悩みもした。けれど、アスカは浮気などしていなかったのだ。
一時期、アスカの様子は少しおかしかった。きっとヒサシに恋をしていたのは確かだろう。だが、彼女はあと一歩のところで踏みとどまっていたのだ。ヒサシは言っていたではないか。“やっと俺の誘いに乗ってくれる気になったのかと”と――。
アスカはヒサシに誘われていながらも、ヒサシの誘いは乗らなかったということだ。アスカはシンゴを裏切ってなどいなかった。その事実にシンゴは安堵し、それと同時に罪悪感を覚えずにはいられなかった。
シンゴは頼んだドリンクを半分も飲んでいなかったけれど、立ち上がった。家に帰らねば、と思ったのだ。
シンゴが家に着くと、アスカがシャワーを浴びているところだった。
アスカと顔を合わせたら、一体、どんな顔をしたらいいのだろう、と思った。良い案は浮かばない。速く打つ鼓動にシンゴはさまざまな思いを巡らせた。