小説「サークル○サークル」01-312. 「加速」

 アスカが煙草に手を伸ばそうとした時、アスカのケータイが鳴った。見慣れない番号に一瞬眉間に皺を寄せたが、すぐに通話ボタンを押す。
「はい」
――あの……アスカさんのケータイでしょうか?
「そうですが」
 聞き覚えのある声がケータイから聞こえてきた。レナだ、とアスカはすぐに気が付いた。
――あの、レナです。名刺を見て、電話しました。今日の夜、お時間いただけませんか?
 今までメールでのやりとりを主にしていたこともあり、アスカはレナの番号を登録していなかったのだ。
「ええ、いいわよ」
――良かった……。
「場所と時間はどこにする?」
――アスカさんのご都合のいいところでお願いします。
「そうね……。それじゃあ……」
 そう言って、アスカはレナのアルバイト先の最寄駅を指定した。
――わかりました。よろしくお願いします。
「それじゃあ、またあとで」
――失礼します。
 そう言って、レナは電話を切った。
 待ち合わせまで、あと二時間。アスカは煙草をふかしながら、自分の格好を見た。事務所で仕事をするには十分だ。けれど、レナと食事に行くには少しダサい。しばし悩んだ後、アスカは一度、着替える為に自宅に戻ることにした。


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