小説「サークル○サークル」01-171. 「加速」

 シンゴにジムに通えばいいと言われたものの、アスカは戸惑った。
「何か不都合でも?」
 シンゴに問われ、アスカは渋い顔をする。
「ジムに通う時間はないし、費用的にもしんどいわ」
「どうにか捻出出来ないの?」
 シンゴの言葉にアスカはしばし考え込む。シンゴは静かにアスカの言葉を待った。アスカは溜め息をつくと、話し出す。
「私が直接関わってるのは、この依頼だけだけど、所長として目を通さないといけない書類もあるわ」
 そう言って、アスカは肩をすくませた。
「でも、オフィスビルの社員を演じるには、いささか無理がある。君の面が割れていないのなら、話は別だけど、そういうわけでもないだろう?」
「それはそうだけど……」
 アスカは視線を落とした。シンゴも別に何かいい方法はないかと考えを巡らすけれど、良さそうなものは何も浮かばなかった。
「ジムに時間を取られるってことは、その分、何かの時間を削らなきゃいけないってことなのよ。今はぴったり時間を使い切ってるもの、無理だわ」
 きっぱり言い放つアスカに、シンゴはにっこりと微笑んだ。
「それなら、いい方法がある」
「えっ?」
 アスカはシンゴの言っている意味がわからず、眉間に皺を寄せた。


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