小説「サークル○サークル」01-176. 「加速」
- 2012年10月20日
- 小説「サークル○サークル」
- サークル○サークル
同じ家にいるから、そこにいるのが当たり前で、そこに存在しているという事実しか確認していなかった、とアスカは言いたかったのでないか、あれは後悔の一言なのかもしれない、とシンゴは思った。
アスカはターゲットと後戻りの出来ない関係になってしまった。けれど、最近、シンゴとちゃんと向き合うようになり、シンゴの良さを改めて確認し、今度はシンゴをないがしろにして、ターゲットに走ってしまったことを後悔し始めている――それが、シンゴが導き出した答えだった。
シンゴはさっきよりも深い溜め息をつくと、作り上げた設定をざっと読み直し、誤字脱字がないことを確認する。プリンターの電源をオンにすると、プリントアウトし、再びその原稿に間違いがないか確認した。
一つのテーマについて、ずっと考えていると、気持ちは荒んでくるし、いい方向になど何一つ考えられなくなってくる。やがて、ドツボにハマり、自分を苦しめていく。そして、そういった重たい空気は相手にだって、いつしか伝わってしまう。けれど、それ以上にシンゴはあることを心配していた。それは、あの日の夜見たことをアスカに言ってしまうのではないか、ということだった。