数日後、久々にシンゴはコンビニやって来ていた。コンビニにはシンゴの他にもう一人雑誌を立ち読みしている客しかおらず、閑散としている。シンゴは店内をぐるっと一周すると、菓子パンコーナーにやって来た。今日の昼ご飯は菓子パンに決めた。
シンゴは新商品の菓子パンとレジ横にあったホットのカフェオレを手にすると、ユウキのいるレジへと向かった。
「いらっしゃいませ」
ユウキは笑顔でシンゴを出迎えてくれた。手際良く、ユウキはレジに商品を通していく。
「あの、今日はもうこれから帰られるんですか?」
会計を済ませたシンゴにユウキは、他の客には聞こえないように小声で訊いた。
「いや、公園で食べようかと思って」
「オレももうバイト終わるんで、待っててもらえませんか?」
「ちょうど良かった。僕も君に話したいことがあったんだ」
「それじゃあ、いつもの公園で」
「ああ、待ってる」
シンゴはそう言うと、商品の入ったレジ袋を持って、コンビニを後にした。
パソコンに向かっている時は余計なことを考えずに済む。沸き出て来る言葉を打ち込み、並べていき、時折、読み返しては、その並び順を変えた。
だから、小説を書いている時だけは、心穏やかになれるんだと思っていた。
けれど、本当に書くということは、そういうことではない、ということをシンゴは知ってしまった。
自分の傷を見て、抉り、目をそらしたい事実を直視し、その事実から与えられる悲しみや憤りに打ちのめされるのではなく、言葉に変換していくことが書くことだったのだ。
シンゴはそうした現実に翻弄されながらも、小説を書き進めた。彼には今は書くことしか出来なかったし、一人でアスカの浮気にやきもきしているよりは、いくらか気が紛れた。
シンゴはパソコンの画面を見つめながら、休むことなく、手を動かした。見る見るうちに画面が文字で埋まっていく。その光景を見ながら、シンゴは少しだけ安心していた。
それは自分が悲しみに翻弄されるだけでなく、言葉に置き換えられる、という事実を目の当たりにしたからだった。
こんにちは☆
Hayamiです。
本日、「サークル○サークル」が配信されました。
な、なんと!
12月に入ってしまいました。
あっという間に今年ももう1ヶ月を過ぎてしまったんですね。
毎年、今年1年どんな1年になるんだろう?
頑張らなきゃ!
とかいろんなことを思うわけですが、
12月になると、もう1年終わるのか……と驚くと同時に、
頑張れていないことを列挙して、凹むんですよね……。
今年も残り僅かですが、今年中に出来ることはやりきって、
来年に備えたいと思います☆
≪お知らせ≫
個人ブログ「Hayami’s FaKe SToRy」にて、
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アドレスはhayami1109@gmail.comです。
作品の感想等送っていただけますと幸いです。
メールは直接私のところまで届きます☆
≪番外編のお知らせ≫
番外編「ドライフルーツ・シンキング~マンゴーな過去に~」はもう読んでいただけた
でしょうか?
作家のシンゴの視点で語られるアスカとのなれ初めや、
シンゴが考えていることを物書きとして描いている、というお話です。
全10回となっておりますので、ぜひこちらも併せてご覧下さい☆
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次回もよろしくお願い致します☆
「そんなに尾行について来たいならついてくればいい。足手纏いになるようなら、容赦なく置いて行く。それでいいなら」
「はい! ありがとうございます!!」
ユウキは満面の笑みで返事をした。
シンゴはユウキと別れると、真っ直ぐ家に帰った。家に帰っても誰もいない。しんとしていて、どこか肌寒い。人がいないということは、こういうことだ。少しの物悲しさを感じながら、シンゴは手洗いとうがいをいつも通り済ませると、書斎へと向かった。
パソコンの電源を入れ、原稿を書き始める。パソコンのライトが目に染みた。
自分のしようとしていることが実はとても馬鹿馬鹿しいことだ、ということに、ユウキを諭している自分を見て気が付いた。
尾行なんてするもんじゃない。したって、何の足しにもなりはしない。ただ空しさや遣る瀬無さが募るだけだ。
ユウキと勢いで尾行の約束をしてしまったものの、シンゴは悩んでいた。尾行をすること自体もそうだったが、何より浮気をしている妻の姿を他人に見せるというのは、いささか男のプライドが傷ついた。浮気されていることを告白している以上、今更だと思われるかもしれないが、それとこれとは別問題だった。
「悪いことは言わない。余計なことはしない方がいい」
「……」
「素人がどうこう出来る問題じゃないんだよ」
「……奥さんは別れさせ屋なんでしたっけ……」
「ああ、そうだよ。プロだって、不倫をやめさせるのは大変なんだ。素人の熱意なんかで、不倫は終わらない」
「……」
シンゴの言っている通りだとユウキは思った。倫理に反しているとわかっていながらするのが不倫だ。それを始めることも続けることも、それ相応の覚悟があるはずだった。勿論、何となくという理由で不倫をしている人もいるだろうが、少なくとも彼女は何となくなんて理由で不倫をするようなタイプではない。それはユウキが一番よくわかっていた。きっと彼女にとって、不倫相手にしか埋められない何かがあったに違いない。
「……わかりました。尾行はやめます」
ユウキは思い詰めた表情で言う。
「そうか、良かったよ」
シンゴはほっと胸を撫で下ろした。
「だけど、尾行には連れて行って下さい」
「どうして?」
「どうしてもです」
ユウキは一歩も引かない。その態度を見て、建前上行かないとは言ったけれど、彼女を尾行する気なんだな、とシンゴは確信していた。