小説「サークル○サークル」01-136. 「加速」

 夜が明けるまで、シンゴはリビングのソファでアスカを待ち続けた。けれど、やがては睡魔に負けて寝入ってしまった。目が覚めれば、アスカの姿があるかと思ったけれど、アスカはいなかった。家に帰宅した形跡もない。
 あの時、ホテルに入るのを止めていれば、とも思ったが、今更そんなことを思っても後の祭りだ。昨日の夜も思ったことだが、あの時、止めていたからと言って、アスカの気持ちがシンゴの元に戻ってくるわけではない。場合によっては、別れを告げられる可能性だってある。それならば、何も言わず、何もせず、ただ真っ直ぐに家に帰り、アスカが帰ってくるのを待った方がいい。そう結論づけたはずだった。けれど、シンゴの口からは溜め息が漏れる。
 ソファで眠っていた所為であちこちが痛い。寝返りもろくに打てない状況が肩こりと腰痛を増進させたような気がしていた。
 一つ大きな伸びをして、そのまま風呂場へと向かう。ぼんやりとしたままの頭で、シンゴは熱いシャワーを浴びた。憂鬱な朝の始まりだった。


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