小説「サークル○サークル」01-146. 「加速」
- 2012年08月21日
- 小説「サークル○サークル」
- サークル○サークル
アスカからの告白は数日が経った今日もなかった。けれど、シンゴは何も言わなかった。いつも通り小説を書き、家事をした。以前より、アスカは家事をしてくれるようになり、随分と楽になったけれど、どこか手放しで喜ぶことが出来ない。それはきっとシンゴの求めているものが、アスカが家事をする、ということではなく、浮気の告白だからだろう。
けれど、シンゴがアスカに浮気のことを問いただすことはなかった。浮気を責めないことが、真実を明らかにしないことが、得策だと思っていた。でも、本当は違う。シンゴはただ事実を突きつけられるのが怖かったのだ。
しかし、その事実から逃げられるわけもなく、シンゴはずっと追われ続けている。アスカに問いただすことが出来ないのなら、相手の男に思い止まるように直談判するのが近道ではないか、とふとシンゴはぼーっとする頭のまま、思いついた。
少々、卑怯な気もしたし、気が引けないと言えば嘘になる。けれど、何もしないで泣き寝入りするのはもっと嫌だった。