小説「サークル○サークル」01-138. 「加速」
- 2012年08月05日
- 小説「サークル○サークル」
- サークル○サークル
ヒサシが連れてきた女のコートにカクテルを零してしまったのだ。コートをハンガーにかけず、膝の上に置いていた為、カクテルでその大半が濡れてしまった。アスカは丁寧に謝ると自分のコートを女に渡した。後日、カクテルで汚れてしまったコートをクリーニングに出して返すので、今日はそのコートを着て帰って下さい、とアスカが提案したのだ。
女は最初遠慮していたものの、コートなしではとてもじゃないけれど、外は寒くて歩けないし、アスカの申し出を受けることにした。
おかげでアスカはバーでの仕事を終えると、寒い中、コートも着ずにタクシー乗り場へと行き、そのまま事務所に向かったのだった。
漸くに朝になったので、コートをクリーニングに持って行くことが出来るな、と思う。アスカはカクテルで汚れたコートを横目で見て、溜め息をついた。
クリーニングに出したら、そのまま、帰宅して、一眠りしようと思い、立ち上がる。
アスカは煙草の火を消すと、コートを紙袋に入れ、事務所を後にした。