小説「サークル○サークル」01-352. 「加速」

「ご無沙汰しています」
マキコは丁寧に巻かれた巻き髪を揺らしながら、お辞儀をした。
「どうぞ、こちらへ」
アスカに促されるまま、マキコはソファに腰をかける。
アスカはお湯を沸かし、ノンカフェインの紅茶を淹れた。
「いつもすみません」
マキコは恐縮しながら、アスカから出された紅茶に口をつける。
「わざわざ、ご足労いただいてありがとうございます。今回のご依頼の進捗のご報告なんですが……」
「どんな感じでしょう? 相手の女性とは別れてくれそうでしょうか?」
「今、女性の方と接触しているところです。あと少しで別れさせることが出来ると思います」
「そうですか。じゃあ、最初の依頼通りの日程で別れさせていただけるんですね」
「そうなりますね」
マキコはそっと胸を撫で下ろす。
他にも女がいることはわかっていたが、まだここで言うわけにはいかなかった。ヒサシとの交渉が終わっていないからだ。
「お身体の方はいかがですか?」
アスカは差し支えない程度にマキコに尋ねる。
「お陰様で、順調ですよ」
「それは良かったです。それから……」
アスカは一通り、今後必要となる手続きについての説明を始めた。
けれど、アスカの気持ちはここにはなかった。あの写真のことがずっと脳裏を過っていたのだ。
一体、どういうことなのだろう……?
疑問だけがくるくると頭の中を回り続けていた。


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