小説「サークル○サークル」01-359. 「加速」

「昔の案件の不倫がまだ続いていて、依頼者のお腹の子の父親はその時の不倫相手――」
「まさか」
 アスカは驚いて、目を見開き、シンゴを見る。
「でも、ターゲットの子どもじゃないなら、その可能性は十分に考えられるだろう? ましてや、昔、不倫をしてたんだ。不倫はいけないことっていう概念はそもそも持ってないだろう」
「確かに……。でも、それって、前の案件は失敗してたってことよね」
「いや、そうとも限らないと思うよ。偶然、街で再会して、やけぼっくいに火が付いたのかもしれない」
「どっちみち、厄介ね」
「ああ、厄介なことに変わりはないね」
「でも、私のところにターゲットの不倫をやめさせるように、依頼して来たのはどうしてかしら?」
「簡単なことだよ。慰謝料を取る為さ」
「だったら、別れさせ屋じゃなくて、探偵に依頼すれば……」
「別れさせ屋に依頼するほど、愛してたのにやむを得ずっていう演出をしたかったか、または……」
 シンゴはしばらく考えた後、「君に依頼したかったのかもしれないね」と言った。


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