小説「サークル○サークル」01-356. 「加速」

 食事を終え、シンゴは後片付けをしながら、ソファに座ってテレビを観ているアスカに視線を向ける。
 一見、テレビを観ているようには見えるけれど、ただテレビの画面を眺めているだけなのだということにシンゴは気が付き、やっぱり、様子がおかしいな……とシンゴは思う。
 洗い終わった食器の泡を水で流しながら、シンゴはアスカのゲンキがない理由の仮定を始める。仕事が上手くいっていない、ターゲットと何かあった……。でも、シンゴの前でもあからさまに落ち込んでいるところを見ると、仕事で何かしらのアクシデントがあったのだろう、という結論に達した。
 全ての食器を洗い終えると、シンゴはホットミルクを持って、アスカの隣に腰をかけた。
「はい、どうぞ」
 アスカの前にコースターを敷き、シンゴはホットミルクを置く。
「ありがとう……」
 少し驚いたようにアスカはシンゴを見た。
 シンゴは隣でホットミルクを飲みながら、アスカと一緒にテレビの画面に目を向ける。
 CMに入るとほぼ同時にシンゴは口を開いた。
「何かあった?」
 シンゴの言葉にアスカはドキリとして、シンゴを見た。
「どうして……?」
「見てればわかるよ。夫婦なんだから」
 そう言って、微笑むシンゴにアスカはぽつりぽつりと話し始めた。


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