小説「サークル○サークル」01-358. 「加速」

「髪型も違ったし、雰囲気も違って、昔は愛人っぽいっていうのかな……。今の妻ですっていう風格とは全然違ってて。あの頃とは、結婚して苗字が変わってるから、ピンと来なかったのよ」
「なるほどね……。でも、過去に何があったって、おかしくはないんじゃない?」
 シンゴは自分の少し後ろめたい過去を思いながら言う。
「そうなんだけど……。今回の妊娠の嘘とあの写真と……。なんか腑に落ちないっていうか……」
「不倫をする女だから、信用ならない、と思ったとか?」
「それもあると思う。ただ見た目は妊婦っぽいっていうか……。あのタイプなら、ヒールは欠かさないはずなのに、ヒールじゃなくてフラットシューズを履いてたし……」
「芸が細かいな」
「うん、まさしく、そんな感じの印象を受けたわ」
「依頼者とターゲットは現在、男女の関係にはないんだったよね」
「うん。そうなのよ。だから、妊娠するなんて有り得ないわ」
「だとしたら、考えられるのは……」
 そう言って、シンゴは思考を巡らせた。


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